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2017.07.20

食事でカラダの内側からキレイに!「薬膳教室」で教える健康食習慣

近年、雑誌やレシピ本などで見かけることも増えた「薬膳料理」。中医学や中国伝統医学の考えをベースとした料理、と言われていますが、具体的にどのような料理なのか正しくイメージできている人は少ないのではないでしょうか。薬っぽい味がする、苦そう、体にはいいけどおいしくなさそう...しかしそのような先入観は誤解です。今回は、私たちが今日から実践できる「薬膳料理」について薬膳料理研究家の新開ミヤ子さんにお話を伺いました。

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薬膳にのめり込んだきっかけは「食がカラダをつくる」ことを体感したから

鍼灸師の資格を持ち、20代は病院のリハビリテーション科で治療師の仕事をしていた新開ミヤ子さん。その後、憧れのCAに転職し国内外を飛び回りますが、30代半ばに差し掛かり、次第に体調不良を感じるように。外食がメイン、食べられるときに食べたいものを思い切り食べて、そこからフライト続きで半日何も食べない…そんな不規則な食生活に原因の一端があると自分でも感じていました。まずは食事で体調を整えようと様々な食事法を試す中で、穀物や野菜、海藻などを中心とする日本の伝統食をベースとしたマクロビオティックに「陰陽(※)」の考え方があることを知ります。

「鍼灸師になるための勉強をしていたので陰陽については馴染みがあったのですが、治療のための理論だけでなく、食養生にも使う理論であるということに気づかされました。それならば、マクロビを勉強し続けるより、陰陽の思想の大元である中国発祥の薬膳を勉強しようと思ったんです」(新開さん)

そこで新開さんは国立北京中医学大学の日本校で本格的に中医学を学び、国際中医薬膳師の資格を取得。その数か月後に薬膳サロンをオープンし、さらに学びを深め、国際中医師の資格も取得しました。現在は薬膳料理教室を主宰する傍ら、漢方講座の講師やレシピ本の出版、旅行会社と提携した韓国へのツアーを年に数回敢行するなど、精力的に活動を行っています。薬膳を取り入れたおかげか、CAとして働いていた頃よりさらに忙しい現在のほうが体調もいいそうです。

「中医学、中国伝統医学の考えをベースとした食事、というと難しく聞こえるかも知れませんが、要は『バランスを整える食事をしましょう』と伝えること、そのために中医学の理論を知ってもらうことが私の仕事です」(新開さん)

※陰陽:世の中に存在するすべてのものが「陰」と「陽」の2つに分けられるという中国の思想に端を発した考え方。

「どんな食材を選び、どう調理するか」毎日の選択でカラダを変える

中医学では生命を維持するために不可欠な基本的な物質を「気・血・水」と呼び、体の不調はこの「気・血・水」のバランスが乱れることで生じます。また、食べるものの中にある力(=栄養素)も気血水を補い、気血をめぐらすもの、水はけをよくするものと考えます。

「たとえば、暑いからキュウリやナス、スイカが食べたい、寒いから温かいスープが食べたいと感じることがあると思います。これは気候や季節に対して不調を起こさないよう、『バランスを取ろう』と体が自然と欲しているから。この他、年齢の変化や、体調に合わせて食事を摂ろうとすることから生まれたのが『薬膳』なので、意外とシンプルな考えに基づいているといえるでしょう」(新開さん)

また、薬膳では、「これを食べてはいけない」という食材があるわけではないので、普段私たちが食べているような食事にも薬膳の考え方は応用できるのだとか。

「肉じゃがに使うお肉を牛肉にするか、豚肉にするかでも薬膳の考えが応用できます。牛肉なら血を補うし、豚肉なら潤いを与える。自分の体調を見ながら、食材の効能を活かす、という考えなんです」(新開さん)

様々な著書の中でも、「陰と陽」「気・血・水」の考え方の基本が丁寧に書かれています。

もっと広く、毎日の食卓で楽しむための「薬膳」を伝えていきたい!

教室に通う生徒さんは40代、50代の女性が中心。仕事や家庭、遊びやおしゃれとやりたいことがたくさんあるのに、体調や健康に不安を抱えた女性たちが「なぜ今自分がしんどいのか」を探りにサロンにやってくるそうです。

「体の不調は時間をかけてつくってきたものなので、それを改善しようと思ったら時間をかけて調子を整えていかなければなりません。一日で目に見える効果があるものではありませんが、続けていけば体の内側から変化を感じることができます。
中医学の理論は1度聞いただけではなかなか理解できないかもしれませんが、この食材には薬膳としてこんな効能があるとか、こういう症状のときはこういう料理がいいというのはすぐに活かせる。わたしが主催する薬膳教室では調理実習は行わず、来ていただいたらすぐに食事をしながらその食材と調理法の勉強会をするのですが、『来るときは体調が悪かったけど、食べ終わる頃には何だか調子がいい、体がポカポカになりました』と喜んでくれる人も多いんですよ」(新開さん)

新開さんが教室を始めて9年、以前と比べると薬膳を扱ったレシピ本やメディアでの露出も格段に増えたものの、それでも薬膳に対する「苦そう」「体にはいいけどおいしくなさそう」といったネガティブなイメージはまだ変わっていないと感じることが多いのだとか。

「初めて来た人が『おいしくてイメージしていた薬膳と違う』って驚かれることも多いんです。でも、おいしくないと日々食べ続けられないですよね。だから教室ではテーブルコーディネートや器に凝ってみるなど工夫して、『今度家族に作ってみよう』とか『女子会するときに薬膳料理を作って持っていこう』とか思ってもらえるものを目指しています。日常に取り入れられるものにして、もっともっと薬膳を広げていきたいです」(新開さん)

また、新開さんは食の意識が高い人が見るような雑誌だけでなく、美容院で手に取ってもらえるような、みんなが見るファッション雑誌などでも薬膳の特集が組まれるようになることが夢だとも語ってくれました。そんな、美味しくて、体にいい薬膳料理を日々研究している新開さんですが、実はお休みの前日には旦那様とビールとポテトチップスを楽しむこともあるそう。決してジャンクなものに触れない生活を送っているわけではありません。

「体にはよくないかもしれないけど、楽しい時間を過ごすには必要ですよね。ポテチを食べて次の日調子が悪かったら胃腸を整える食事をしますけど、そういうものを全部排除していくと心が苦しくなりますから」(新開さん)

心とのバランスも大切にしながら、美味しく、体にもよく、楽しく、のもとに始める薬膳料理。これからますます注目を浴びそうです。

Text:真貝友香

【取材協力】

新開ミヤ子(しんかいみやこ)さん
薬膳料理・韓国料理研究家。鍼灸師、按摩・マッサージ・指圧師の国家資格取得後、病院の理学療法室に勤務。その後、客室乗務員に転職、国内外のフライトを通じてさまざまな食文化に触れる。退職後、国立北京中医薬大学日本校で国際中医師、国際中医薬膳師の資格を取得。体の中からキレイと元気を作る薬膳料理教室、韓国料理教室“薬膳Salon”を主宰し、薬日本堂漢方スクールで漢方講座、薬膳セミナーの講師をするほか、雑誌などでも活躍中。著書に『家庭で楽しむ韓国薬膳料理』『冷えとり薬膳レシピ』『漢方毒出しスープ』(ともに小社刊)がある。

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