週末農業を体験すべく、訪れたのは、東京都世田谷区にある農園。閑静な住宅街が立ち並ぶ東急大井町線の尾山台駅から徒歩10分ほどのところに、忽然とその農園は現れました。体験したのは7月初旬。都会のグレーな色に慣れきった目に、生命力あふれる緑が眩しい……!
こんな都会に農園が!? と驚きましたが、今回週末農業体験をさせていただいたマイファームの田村征士さんによると、「週末農業にとって立地は大切な要素のひとつ。普段の生活エリアからあまり遠すぎると通うのが大変なので、最近は23区内にも気軽にチャレンジできる農園が増えているんですよ」とのこと。
なるほど。通いやすい場所にあるのは嬉しいけど、農具を揃えて毎回持ってきて作業するのは、大変そうですね……。 私、野菜づくりは保育園の芋掘り以来、やったことないんで、知識も全然ないんですよ。
「いえ、農具も肥料もすでに用意されているので、手ぶらで来ていただいて大丈夫です。また、スタッフがアドバイザーとして野菜作りを教えますので、まったくの初心者でも1年目から収穫の醍醐味を味わえますよ」(田村さん)
えーっ! 手ぶらで来て、帰りは採れたての野菜を持って帰れる、ってことですか?週末農業は、そんなに気軽なものになっていたんですね。
<アドバイザーの駐在時間や、農園での基本作業のアドバイスが貼られています。>
イマドキの週末農業がわかったところで、さっそく農業体験に。体験した7月初旬はちょうど収穫の時期で、トマトやピーマンの収穫体験ができるとのこと。やったー!
ちょうどミニトマトが収穫の時期を迎えています! ハサミでぱちんと切ります。
収穫できました。すごく嬉しい!
ピーマンも!
背が低い植物は、腰をかがめないといけないのが若干つらいですが、簡単に収穫できちゃいました。採れたての野菜は本当においしいとのことなので、早速食べてみましたが……めっちゃくちゃおいしい! ものすごくみずみずしい! 今まで食べてきた野菜とぜんぜん違う! と、本当に感激しました。
しかし、野菜づくりの中でも1番のクライマックス「収穫」だけを体験するなんて、なんとなく「おいしいとこ取り」をしているような気がしてきました。そこで田村さんに、「野菜をつくる上での下積み作業、つまり収穫前の作業をしたいのですが」と、リクエスト。
「では、ミニトマトの剪定作業をしてください。ミニトマトは週末農業にピッタリの野菜なんです。きゅうりは週に1度しか来られないと、育ちすぎてしまうことがありますが、ミニトマトは大丈夫なんですよ」(田村さん)
あっ、確かに育ちすぎた家庭菜園のきゅうり、もらったことがあります!
「普通の大きさのトマトも、熟し過ぎると落ちてしまうことがありますので、初心者の方にはミニトマトをおすすめしています。ミニトマトの剪定は、幹と太い枝の分かれ目から生えるわき芽を取って、栄養を集中させて収穫量を増やすのが狙いです」(田村さん)
ではやってみましょう。実がなりそうなメインの枝を切らないように、細いわき芽を摘んでいきます。
よく見ると、次から次へと芽が生えているので、地道に摘みます。
他には、ゴーヤがネットに沿って成長できるように、伸びている芽を丁寧にネットに絡ませたり……
雑草を取るのも大事な作業です。根をしっかり張っているので、取るのが大変!
当日はとても暑かったので、たったこれだけでも汗だくに。しかし、田村さんによると、もっとも大変なのは2月と8月の土作りの時期とのこと。
「2月はすごく寒いし、8月はすごく暑い中、スコップで土を掘り起こし、畑にして、種まきをするのでとても大変。ですが、大変な時期に頑張った人が、収穫時にうれしい思いができるんです。自然の原理は良く出来ていますよね」(田村さん)
寒い時期の土作りの様子です。寒い中や暑い中、土作りから始めて収穫できた野菜は、とってもカワイイし、すごくおいしく感じるんでしょうね。
「女性は虫がニガテという方もいますが、野菜作りを始めると、虫を見つけたら野菜を守るためにブチッとつぶしますよ(笑)」(田村さん)
女性もカワイイ野菜のために、たくましくなるんですね!
実際に週末農業を実践されている女性の方がちょうどいらっしゃったので、お話を聞いてみました。
「プランターの野菜作りもしたことがない、まったくの初心者から始めて、今年で4年目です。震災で食べ物が手に入らない状況を体験して、野菜ぐらいは自分で作りたいと思って始めました。」
もう4年目とはベテランですね! 実際に自分で作ってみて、いかがですか?
「やっぱり鮮度が良いので、ものすごくおいしいです! また、野菜のありがたみが分かって、食べ物を大事にするようになりましたし、食材を買うときも産地や育て方が気になるようになりました。いろいろな野菜を作っていくうちに、今度はこの楽しさを皆に伝える仕事がしたいと思い始めて、今は野菜づくりを指導するアドバイザーになるための講習を受けているんです」
さすがベテランだけに、慣れた手つきで野菜を手入れされています! まったくの初心者から始めて、アドバイザーを目指すほどにステップアップされたなんて、とてもうらやましいです。初心者だったからこそ、本当に初歩の初歩から教えてもらえそうですし、野菜づくりの楽しさを実感を持って伝えてくれる素敵なアドバイザーになるんでしょうね! 私も教えてもらいたいです!!
週末農業を体験してみて気づいたのは、ものすごくハードルが高いものだと思っていた農業に、気軽にチャレンジできるということ。また、太陽の下で育っている野菜に触れていると、エネルギーを感じて、リフレッシュにもつながることがわかりました。
田村さんによると、週末農業を始めてその楽しさに気づいた人の中には、アドバイザーを目指す人、野菜の知識や活用法を身に着けたいと栄養や料理関連の講座に通うようになった人、さらには就農を目指す人まで出てきているとのこと。私も土なんてほとんど触ったことがありませんでしたが、次回は土作りも体験してみたいなあ、と、もっともっと深く関わりたくなりました。
さらに、あんなに採れたての野菜がおいしいなんて、感激です! 自分で育てた野菜ならもっとおいしく感じるんだろうなあ、もっとストレス解消にもなるんだろうなあと、週末農業を楽しんでいる人がうらやましくなりました。
野菜づくりに触れたことで、もっと食材のことについて知りたい、食を追求してみたいと感じたので「食生活アドバイザー」の講座に興味が出てきたし、今すぐに自分なりの野菜づくりを始めてみたいとも思ったので「楽しい園芸」で始めてみるのもいいですよね。皆さんも、ぜひ体験して、とれたて野菜のおいしさと、野菜の持つエネルギーを感じてください。
取材協力:体験農園マイファーム(http://myfarmer.jp)
週末農業体験を通じて感じたのは、採れたての野菜のおいしさ。自分で作った野菜ならばなおさらおいしいですし、大切に食べたいですよね。子どもにも、自分の手で作るおいしさ、そして食の大切さを伝えることは「食育」につながります。「恵比寿じもと食堂」は、食材は農家さんから直接届けられ、一緒に作ったりして、子どもに食の大切さ、おいしさを伝える活動をしています。運営者の末岡真理子さんに聞く、設立の思いや運営方法とは……?
ライター
Orie Uematsu
うまい酒を飲むために日々研鑽中。努力が実り、酒と合わせる食材の鮮度や産地にはかなりうるさい。おいしいものを少しずつ、酒肴の集まりにしか見えない手づくり弁当をInstagramに日々アップして自己満足しています。